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東京高等裁判所 昭和61年(ラ)705号 決定 1987年5月21日

抗告人 甲野太郎

主文

本件抗告を棄却する。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は別紙「執行抗告状」及び「上申書」に記載のとおりである。

二  一件記録によると、本件引渡命令は、対象土地のみを競売による売却により取得した抗告人が、その土地に、最先順位の抵当権の設定登記がされる以前から、建物を所有して右土地を占有する高橋清に対して申し立てたものであることが明らかである。ところで、抗告人の求めるように、「相手方は、抗告人に対し、本件土地を引き渡せ。」との引渡命令が出されたとしても、右命令中には、本件土地上に存する相手方高橋清の所有する建物の収去という作為を同人に命ずる内容は含まれていないから、右命令によっては、右建物の収去を実現することはできない。本件においては、右建物の収去なくしては、本件土地の引渡しということはあり得ないのであるから、結局、抗告人の求める引渡命令は、法律上の意味がないものといわざるを得ない(なお、仮に抗告人が引渡命令の申立てによって建物収去をも求めているとしても、引渡命令によっては、右収去までを命ずることはできないと解すべきである。)。右高橋が執行手続上の債務者であっても、そのことにはかわりはない。

してみると、本件申立は、その余の点につき判断するまでもなく理由がなく、これを却下した原決定は、結局相当であるので、本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 伊藤滋夫 裁判官 鈴木経夫 山崎宏征)

<以下省略>

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